2017年7月1日土曜日

塩のはなし(上)

塩のはなし(上) 減塩は正しくない
生理学博士 久間英一郎

今回から二回に渡って、塩について書きます。

中国伝統医学では塩味のことを、<鹹>といい、「軟堅散結、瀉下通便」(体の流れをよくする)の効ありとして重視しています。

日本では、塩は高血圧の原因として敵視され「減塩こそが高血圧を下げ、脳卒中等の成人病を予防するものだ」との考えが、あたかも常識であるかの如く受け入れられてきました。その結果、国も医師も国民もこぞって<減塩運動>にとりつかれています。

これは正しくない考え方です。この「塩=高血圧」の理論の根拠となった二つのアメリカ人博士の研究を紹介します。

一つはメーネリー博士の研究で「10匹のマウスに通常の20倍の食塩と1%の食塩水を与え続けたところ、6ヵ月後にそのうちの4匹が高血圧になっ た」というものです。多量の食塩を与えると当然のどが渇きますが、この実験では、飲み水にまで食塩を加えていました。このような極端な塩とストレス攻めの 状況下では、高血圧だけでなく、他の病気になってもおかしくありません。それでも6匹は高血圧にもならなかったことは、むしろ注目に値します。

もう一つのダール博士の日本での研究は「東北地方と九州地方の塩の摂取量と高血圧の患者数との関係を調べたところ、東北地方が九州地方に比べて、摂 取量も患者数も2倍だった」というものですが、東北地方は九州地方よりはるかに寒いので、血管が収縮し、血圧が上がるのは当然です。塩が高血圧の原因とす るには説得力に欠けます。このように「塩=高血圧」の理論は、非常に弱い根拠に基づいたものなのです。

これに対し、心ある学者は、次のように反論しています。

まず、アメリカのラルフ博士は、米国医師会誌「HEALTH」上に、「塩を与えよ、塩は決して悪くない」という論文を発表しました。

次に日本の高血圧の権威、名古屋市立大学教授・青木久三氏の主張を要約すると、次のようになります。「高血圧をその原因で分類すると、1.本態性高 血圧症、2.環境性二次性高血圧、3.基礎疾患二次性高血圧に分けられる。1.は親から子へ受け継がれるもので、これが高血圧患者全体の90%。2.は寒 冷地、肥満、アルコール、食塩、過労等といった環境の下に発病するもの。3.は、ある病気の合併症として出るもの。2.3.で、全体の10%。この中で減 塩で高血圧が下がるタイプは、腎臓障害によって尿に食塩が排出できないために起こるもの(一般にむくみを伴う)と、食塩に対する感受性が強いために起こる 食塩過食性高血圧があるが、このタイプは、高血圧患者100人中、1~2人に過ぎない。」

つまり98~99%の高血圧患者及び、圧倒的大多数の健康な国民にとっては、減塩は意味のないことになります。むしろ減塩が過ぎると、元気が出ない、食欲不振、無気力、精力減退等、様々な問題を引き起こすことにつながります。

前述の青木氏は、「ビタミンの欠乏は特定の病気を引き起こすだけだが、塩の欠乏は命を奪うことになる」と警告しています。

では、食塩なら何でも、どれだけでも食べてよいかというと、そうではありません。結論から言うと、「自然塩を適量に」ということになります。アンバイが大切なのです。ちなみに「アンバイ」は「塩梅」とも書きます。